睡眠を考える~より良い眠りのために~

ベットで目覚める女性

皆さんは朝までぐっすり眠れていますか?

仕事が忙しい…

なかなか寝付けない…

どうも朝スッキリ起きられない…

いろいろとお悩みがあると思います。今回は睡眠について深堀りしながら、快眠を手に入れるための方法を考えていきたいと思います。

日本は世界一眠らない国

OECDの2018年の統計によると、1日の睡眠時間は多くの国が8時間を超えているのに対し、日本は7時間22分と33か国中ワースト1だったそうです。

日本の中でも、都会に近づくほど睡眠時間が短くなるという国内データもあります。

睡眠不足の問題点

パフォーマンスの低下・損失

皆さんよくご存じだと思いますが、パフォーマンスダウンがやがて大きな事故・損失へと繋がっていきます。

また、睡眠不足による経済損失は年間約15兆円という研究結果もあり、その悪影響は計り知れません。世界のエグゼクティブやトップアスリートがこぞって意識しているのが「睡眠」なのです。

睡眠不足の女性

感染症にかかりやすくなる

睡眠不足の状態は、ウイルスと闘う免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなってしまいます。当然COVID-19についても同様です。

また、風邪をひいてしまったときに寝て治すことがあると思います。ウイルスに感染すると、免疫が働き発熱と睡眠を引き起こします。免疫が働いているのですから、睡眠は最適な療法と言えます。

更に、睡眠不足だと予防接種をしても抗体反応が弱く、効果が弱まってしまうという研究報告もあるそうです。

睡眠不足で肥満に?

夜更かしをするとつい食べ過ぎてしまうこと、ありませんか?

肥満の男性

睡眠と肥満の関係はどのようなものなのでしょうか。

起きている時間が長いから食べ過ぎてしまうのではなく、食欲に関わるホルモンが、睡眠不足によって影響を受けて太りやすくなってしまうのです。食べ過ぎ抑制ホルモン「レプチン」と、食欲が増すホルモン「グレリン」のバランスが変わってしまい、食欲が抑えられなくなり、肥満に繋がります。

睡眠負債とマイクロスリープ

睡眠不足が慢性化している状態を「睡眠負債」といいます。気付かないうちに膨れ上がっているイメージです。

1日平均で8.2時間の睡眠をとると、睡眠負債はたまらないといわれています。

また、1日平均40分の睡眠負債が解消されるまでに、3週間はかかるともいわれています。

睡眠負債はありますが、睡眠預金はできません。寝だめをしても睡眠のバランスを崩してしまうだけです。

ベッドで睡眠中の女性

また最新の研究で、夜勤明けなどの極端な睡眠不足状態では、本人も意識していないほどの瞬間的な眠り(マイクロスリープ)をしていることが分かりました。 ほんの数秒意識が飛ぶ、これが運転中ですと大変危険ですよね。

睡眠について理解を深める

90分の倍数にこだわらない

人間の睡眠のサイクルは90分周期だ、と理解している方も多いと思います。

ノンレム睡眠からレム睡眠(後述します)へのサイクルは、人によって、また同じ人でもその日の体調によって変化します。だいたい、80~120分周期と、個人差が大きくあります。

レム睡眠とノンレム睡眠

レム睡眠とは、身体は休息した状態なのに、脳の活動は起きている時に近い状態で、記憶の整理などを行っていると考えられている睡眠状態です。脳が起きているので、眼球がキョロキョロと動いて(rapid eye movement:REM)いるのが分かります。

いっぽうのノンレム睡眠は、REMでない、つまり脳も休息している状態をいいます。睡眠中、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返して起床します。

睡眠サイクル

深いレム睡眠は脳の休息時間

深いレム睡眠とは、入眠して最初にくるレム睡眠を指しています。

寝付いて最初のワンサイクルが、睡眠全体の質を左右するといわれるとても重要なサイクルになります。最初のワンサイクルで、ホルモンバランスも7割方整えられています。

ほかにも…

  • 脳をしっかり休ませ、身体をメンテナンスする。
  • 自律神経や、ホルモンバランスを整える
  • 記憶を整理して定着させる
  • 免疫力を上げて抵抗力を高める
  • 脳の老廃物を除去する。

などの役割があります。どれも人間にとって必要不可欠なものです。

怖い睡眠時無呼吸症候群

最近、睡眠時無呼吸症候群について取り上げられることが増え、誰しも一度は耳にしたことがあると思います。

眠っている間にしばしば呼吸が止まってしまう病気で、覚醒も伴うため慢性的な睡眠不足状態になります。

その結果、日中も耐え難い強い眠気を感じるようになってしまいます。放置すると、生活習慣病の原因になるといわれ、治療せずにいると死亡リスクが高まります。

日中耐え難い眠気を感じる、就寝中にイビキが突然止まるなどの指摘を受けているという方は、なるべく早めに睡眠外来を受診してください。

太った男性に多いイメージですが、実際はやせ型の人も多く発症しています。

より良い眠りのために

今まで脳の働きという側面から睡眠を考えてきましたが、ここからは睡眠の環境について考えていきましょう。

深い眠りにつける環境とは

まず、静かな環境を用意しましょう。

出来るだけ寝るための道具以外は置かないようにし、テレビ、パソコン、スマホも設置を避けてください。また、就寝前にはリラックスできる、暗めで色温度の低い(赤系)の照明を使用することも質の高い眠りに繋がります。

寝室の温度湿度もおすすめの環境があります。

睡眠中の寝具内は、温度が33℃前後、湿度50%前後が最適とされています。

この条件を作るためには、季節にもよりますが室温を13℃から29℃くらいに調整するのが良いようです。

寝室

パジャマや寝具にも拘りましょう。

パジャマは、リラックス効果をうたうものや、疲労回復に役立つものなどいろいろな種類のものが販売されています。サテンやシルクなど、気に入った素材のものを選びましょう。

また寝具は、普段立っている姿勢に近く、身体への負担が少ない姿勢が良いとされています。

枕の高さは、床面と首との角度が5度くらいになるような高さで、首や肩に負担がかからないものを選びましょう。ベッドマットや敷布団は適度に硬いほうが背骨が曲がりすぎず、快眠に繋がります。

おわりに

睡眠の質を高め、快眠を得るために睡眠不足の危険性、睡眠のメカニズム、眠るための環境を考えてきましたがいかがでしたでしょうか。

睡眠とうまく付き合うことが、健康で輝く毎日のベースとなります。この記事が、皆さんの安眠の一助となるよう願っております。 それでは、おやすみなさい。